【地球温暖化対策】サハラ砂漠を緑化すると温暖化進行の意外な結果

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【地球温暖化対策】サハラ砂漠を緑化すると温暖化進行の意外な結果

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地球温暖化対策の一つとして脱炭素、カーボンニュートラルが推進され環境への配慮が注目されています。そのような中、地球温暖化の一つは砂漠が拡大していることを懸念している方も多いことでしょう。では世界最大の砂漠地帯であるサハラ砂漠を緑化すると大きく温暖化を防ぐことができるのでしょうか。興味深いことにサハラ砂漠では植物が豊かだったという証拠が発見されています。それはサハラ砂漠に位置する「タッシリ・ナジェール」という場所です。そこでは12,000年前の岩絵が発見されている。その岩絵には、象やキリンといった砂漠に生息しているとは思えないような動物の絵が描かれています。この岩絵から12,000年前には北アフリカには、砂漠ではなく湿潤なサバンナが広がっていたことを示すものとなっています。それでも現在では広大な砂漠が広がっており、地球上の中でも最も過酷な環境に位置付けられています。では、現在広がっている広大なサハラ砂漠をかつての緑へと復活させると何が起きるのでしょうか?今回の「TimeMachineMuseum」では、サハラ砂漠の緑化プロジェクトやテラフォーミングに注目します。


「サハラ砂漠が地球に存在する理由」

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サハラ砂漠が現在の姿になったのは、人間の活動や存在が大きく関係しているのでしょうか。実は、そうではありません。サハラ砂漠が現在の姿になったのは人間の活動とは全く関係なく、地球の自転軸が大きく関係していると考えられています。地球は自転しながら太陽の周りを公転しています。この公転の仕方に注目できます。実際には、回っているコマがふらつくように地球の自転軸は、わずかに円を描くように揺れているということです。その周期というのは、約20,000年。そのため地球の公転軌道で最も太陽に近づくときにどの季節に当たるのかが20,000年周期で変化し、10,000年前には地球の北半球が夏の時に太陽に最も近かったようです。その極僅かな差によって、アフリカ大陸の北部の降水量が増加したと推定されています。しかし、現在ではサハラ砂漠のすぐ南に位置しているサヘル地方で砂漠化が進んでおり、人間の活動による地球環境の変化も関係していると考えられているようです。砂漠化への危機感から2007年には「グレート・グリーン・ウォール(緑の壁)」と呼ばれるプロジェクトがアフリカ連合主体で開始されました。これは、サハラ砂漠の南に沿って全長およそ8,000kmに渡る植林を行うことでサヘル地方の砂漠化を防ごうとする、非常に挑戦的な取り組みです。しかし実情は、このプロジェクトは計画通りには進んでいないようです。2030年までに完了させる計画に対して2021年時点で4%しか完了していないということです。そもそもサハラ砂漠が拡大しているというよりも「過放牧」、「焼畑農業」、「干ばつ」などの影響でサヘル地方が縮小しているということです。また植林された地域の多くは、人口が少なく樹木の世話が難しいこともあり、植林された木の実の80%が枯れてしまったと推定されているのです。一方で、ニジェールやブルキナファソなどの一部の地域では、畑の中で樹木を育てる伝統的な農業方法と組わせることで成果を上げているようです。


「砂漠の緑化を実現可能な技術」

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このような状況について「攻撃は最大の防御」という言葉がある通り、サハラ砂漠の拡大を防ぐのではなく、サハラ砂漠自体を緑あふれる大地に変えてしまえば良いと考える方もいるかと思います。確かに火星という巨大な星をテラフォーミングすることを考えれば、それに比べれば860万㎢程度のサハラ砂漠をテラフォーミングすることは容易なことに思えるかもしれません。植物が大気中の二酸化炭素を取り込み、地球温暖化抑制もできる、とても効率的な方法のように思うかもしれません。では、このことを実現すると何が起きるのか。砂漠を緑化するということは、実は単純なことのようです。乾燥や熱に比較的強いユーカリなどの樹木を植樹し、枯れないように水や肥料を与え続ければ可能なのです。ある程度緑化が進めば、樹木から蒸発する水により雲ができるために多少の降水も量が増加することを期待できるかもしれません。水の調達については、海水の淡水化技術、また栄養については肥料を合成する化学技術があるため安心です。費用が問題と考えるべきでしょうか。実のところ地球温暖化と砂漠化がこのまま進んだ場合の被害総額と比べれば費用は安いと考えるべきでしょう。世界の国々が一つになって費用を負担し取り組むならば、サハラ砂漠の拡大を防ぎ緑化することは可能でしょう。そして、地球温暖化も抑えることも可能でしょう。しかしながら実際には実現は非常に難しいといえます。


「砂漠の緑化による影響とは」

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植物が大気中の二酸化炭素を取り込むことによって現在進行している、地球温暖化が抑えられる方向に進むことは事実です。一方で地球の温度は、二酸化炭素濃度のみで決まるわけではありません。サハラ砂漠の表面を覆っている砂は太陽光を反射しやすいために砂を緑に変えてしまうと大地が太陽光のエネルギーを保持しやすくなり、結果として気温を上昇させる方向に寄与してしまうのです。つまり二酸化炭素濃度の減少の影響に比べて大地が保持する熱量の増加の影響が大きく、サハラ砂漠の緑化により地球の平均気温は、むしろ増加すると推定している研究報告もあります。しかし逆の研究報告もあります。サハラ砂漠の緑化によって上空に雲が増え、雲も太陽光を反射しやすいため、その影響を考慮すると地球全体の気温は低下するという試算です。しかしこの試算は、サハラ砂漠の緑化だけでなくオーストラリアの砂漠も同時に、しかも一瞬で緑化した場合というものです。ここまで地球温暖化対策を施して表れる成果とはどれほどのものでしょうか。


「地球温暖化対策の成果とは」

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実は、人類が現在の技術で砂漠の緑化を行い、地球温暖化対策を施した場合、2,100年時点で世界の平均気温が「0.5℃」減少するという試算結果が出ており効果は比較的小さなものなのです。さらに海水の淡水化により出た大量の塩をどのように廃棄するかといった、様々な問題点もあります。しかも、ここまでのことは予想できる範疇のことで想定外の事柄は未知数です。例えば、サハラ砂漠の緑化によってアマゾンの熱帯雨林が受けてしまうのです。南アメリカに存在するアマゾンの熱帯雨林の土は、肥料の三要素と呼ばれる「窒素」、「リン」、「カリウム」のうち「リン」の含有量が少ないことが知られています。それに対してサハラ砂漠の砂は「リン」を豊富に含んでいるのです。サハラ砂漠の砂は風によって舞い上がり、貿易風に乗って西に向かうことがあり、大西洋を越えて南北アメリカに到達することも少ないようです。実際、サハラ砂漠によりアマゾンの熱帯雨林に供給された「リン」と降水により流出した「リン」の量が一致するという研究結果もあり、サハラ砂漠が緑化してしまうとアマゾンの熱帯雨林の植物が減少してしまう可能性があるのです。またアマゾンの熱帯雨林以外にも、北極付近の温度が上昇する可能性やアジア地域では雨季の降水量が増加する可能性もあるようです。こうした事柄を考えると、地球環境は様々な事柄が複雑に絡み合って形成されているということが明らかです。ですから、地球環境の一部分だけを人間にとって都合の良いように変化させると予期せぬ事態が起こってしまうことを明確に表しているのではないでしょうか。そう考えると、私たちの生活の仕方や環境について意識を高めたいものです。

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管理人:TMM

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。