【セルロースナノファイバー】大王製紙も開発した1兆円規模の素材

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【セルロースナノファイバー】大王製紙も開発した1兆円規模の素材

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日本初の「夢の新素材」とも呼ばれ、技術系メディアだけでなく一般メディアでも度々取り上げられている「セルロースナノファイバー」。現在、世界中で推進されているテーマが「持続可能エネルギー」です。限りある資源を未来に託すための、そして永久的に地球が全体として人類の繁栄を目指して「持続可能な社会形成」が求められるようになっています。それゆえに素材分野という面で世界中で注目されているのが、「セルロースナノファイバー」です。これは、木材から得られる木材繊維を原料とした世界最先端のバイオマス素材です。植物繊維由来であることから生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、次世代を担う素材として注目されているというわけです。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、「セルロースナノファイバー」に注目しています。


「1兆円市場規模となるセルロースナノファイバー」

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2030年に国内1兆円市場が期待される新素材として注目されている「セルロースナノファイバー」。注目を集める理由の一つは、植物由来の材料のために材料のための枯渇の心配がないこと、環境負荷が低いということが挙げられています。さらに植物の栽培中は光合成によって二酸化炭素を吸収するために地球温暖化対策として温室効果ガスの低減にもつながるとされています。このような経緯から「セルロースナノファイバー」は、「グリーン材料」と言われて高い評価を受けています。実のところ日本は、「セルロースナノファイバー」の研究においては、日本の製紙企業をはじめ大学でも研究が進められており、世界トップ開発技術を有しているのです。


「セルロースナノファイバーとは一体何か」

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「セルロースナノファイバー」とは、植物の細胞壁の主成分セルロースをナノレベルまで微細に解きほぐしたものです。直径は3~50nmで、アスペクト比が100以上の極細の繊維状物質は一般に「セルロースナノファイバー」と呼ばれていて液体状であったり、乾燥体、あるいは成形体などのさまざまな形態で提供されます。そして「セルロースナノファイバー」の性質についても驚きの結果が出ています。強度は、鋼鉄の1/5の軽さで、鋼鉄の5倍以上の強度を有しているということです。熱による寸法変化は小さく構造体として用いるのに非常に優れているということです。さらにガラス並みの熱伝導性や酸素などのガスバリア性が高いこと、水分散液の特徴的な粘性などの優れた特性も持ち合わせています。安全で環境性の高いバイオマス素材であることも注目の理由です。また「セルロースナノファイバー」をプラスチック樹脂に加えることでメリットを発揮します。プラスチック樹脂に加えることで樹脂の弾性率を1.3~1.4に向上させ、強度は1,1~1,2倍も向上します。研究では配合率を50%~80%の「セルロースナノファイバー」とパルプ繊維を複合化したものは軽量でありながら汎用プラスチック材料と比較して強度が強く、熱特性にも優れる高性能な材料です。


「セルロースナノファイバーはどの分野が最適か」

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「セルロースナノファイバー」は、形状や特徴的な物性によって、フィルター素材、高ガスバリア包装部材、食品、医薬、化粧品、ヘルスケアなど様々な分野において利用が期待されています。例えば、「セルロースナノファイバー」の水分散液の特徴を利用して、「三菱鉛筆」と「第一工業製薬」は、ボールペンインクを開発しています。ボールペンのインクに「セルロースナノファイバー」を混ぜ合わせると筆記時はインクの粘度が低下します。すると記載時に滑らかにインクが流れてスムーズに筆記できます。さらに静置時や筆記後は粘度が増加するためにペンからのインク漏れや文字のにじみを防ぐことが出来るのです。「大王製紙」は、パルプに「セルロースナノファイバー」を混ぜることで耐久性を向上させ、トイレに流しても詰まらないトイレットクリーナーを開発し成功しています。


「セルロースナノファイバーのデメリットとは」

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「セルロースナノファイバー」のデメリットとは、材料費の高さです。既存材料と比較すると価格は、3000円~10000円/kgと言われているのです。この価格を下げるためには、大量生産、大量消費の使い方が素材の価格を下げていくことになりますが、構造材料用途が不足しているために難しい状況です。この状況は「炭素繊維」も同様です。「炭素繊維」を樹脂に複合させた「炭素繊維複合材料」は、1970年代前半から工業生産されゴルフ用品やスポーツ用品などに使用されました。そしてようやく、2011年就航の「ボーイング787」、2014年就航の「エアバスA350XWB」では、機体重量の半分以上が「炭素繊維」を含む「炭素繊維複合材料」が使用されていたのです。このように40年以上もの時間が経過して世界中に普及したことを考慮すると、「セルロースナノファイバー」も同様に普及までには時間が必要と言えるでしょう。

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管理人:TMM

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。