
目次
【フッ素ナノチューブ】日東工業の技術開発で世界水資源問題が解決
あわせて読みたい記事:【石油大国日本】2028年に経済効果2000兆円以上の油田開発
あわせて読みたい記事:【東芝・小型高速炉4S/超臨界CO²サイクル発電】再エネ利用発電
あわせて読みたい記事:【酸化ガリウム半導体】タムラ製作所開発で世界トップの半導体とは
世界の人口が増加していく中で、伊飲料水などの水不足の問題が近年、問題となっています。それは、地球上に存在する水の多くは海水で塩分を含んでおり、地球上の水の割合の97%を占めているのです。そして、残る3%は、というと氷河や氷雪の状態の淡水という存在です。こうした事実から人間が地球上で利用できる淡水の割合は、0.01%という非常に少ないのです。それゆえに地球上の97%を占めている海水を淡水化する技術があれば、人類の水不足問題も解決されるということになります。そこで、注目されているのが、日本の「フッ素ナノチューブ」という技術です。このフッ素ナノチューブという海水を淡水化する技術の一つこそ開発の進歩が期待されている技術なのです。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、「フッ素ナノチューブ」技術について注目します。
「海水を淡水化する技術・方法」
あわせて読みたい記事:【茨城県五浦海岸ガス油田】日本が世界資源国なる600年分の資源
現在において海水を淡水化する様々な方法が世界中で考案されているということです。その一例は下記の通りです。
「多段フラッシュ法」:海水を熱して蒸発させ、再び冷やして真水に変換するという方法です。実用プラントでは、多数の減圧室を組み合わせているので、多段フラッシュ方式と言われています。この方法は、エネルギー資源において余力のある中東の産油国に多く採用されている方法です。熱源として発電所の復水や油井から上がってくる随伴ガスや精製時に発生するオフガスを利用することが多く、製油所や火力発電所に併設されている場合が多いと言われています。例として、サウジアラビアなどは、この多段フラッシュ式を採用しており大規模に真水の生産を行っています。1981年に稼働したジェッダNo.4プラントの生産水量は、日量22万トンで2005年9月のデータによれば世界最大のプラントは同公団がアシュベールに持つ日量100万トンのものです。これらのプラントから精製された真水を工業用水や一般家庭用水の主水源としており、加えて余剰の淡水を農業用水としても利用しています。
「逆浸透法」:海水に圧力をかけて逆浸透膜を通して淡水化する技術が逆浸透法と言われています。これは、濾過膜の一種に通し海水の塩分を濃縮して捨て淡水を濾し出す方法で、フラッシュ法よりエネルギー効率に優れています。しかし、RO膜が海水中の微生物などで目詰まりしないように入念な目処理を必要とします。また整備にコストがかかってしまうことが難点とされています。この逆浸透法は、日本においても行われており福岡県福岡市東区に「まみずピア」という施設があります。この施設では日量5万トンの淡水化を行っているのです。
世界において日本の「日東工業」、「東洋紡」、「東レ」の三社が逆浸透に必要な「RO膜」の技術で世界をリードしています。
「日東工業」:日東工業製品の脱塩率は、99.75%を達成しています。そして、「東洋紡」、「東レ」も同水準の脱塩率を達成しています。1960年代から海水を淡水化することが考えられてきました。1961年にケネディ元大統領は、「海水から淡水を安く手に入れることが出来るようになれば、それは人類に長く豊かさをもたらすことになり、他のいかなる科学の業績もその前には小さなものにしか見えなくなる。」と述べています。
「東大と理研による開発」
あわせて読みたい記事:【ブルー水素】日本の石炭火力発電技術から環境と経済に革命が起きる
この「フッ素ナノチューブ」の技術は、東大と理研による今共同開発です。この技術というのは、水を通して塩を通さないというもの。東京大学大学院工学系研究科に所属する「伊藤義光」氏や理化学研究所創発物性科学研究センターの副センター長の「相田卓三(卓越教授)」氏たちが所属するチームが開発。テフロン表面のように内壁がフッ素で密に覆われた、内径0.9ナノメートルのナノチューブを超分子重合によって開発。
「フッ素ナノチューブとは」
あわせて読みたい記事:【ナノインプリントリングラフィー】半導体回路形成技術による国家戦略
「フッ素ナノチューブ」は、テフロン表面のように内壁がフッ素で密に覆われた内径0.9ナノメートルのナノチューブのことです。内側にはフッ素原子が密に結合した大環状化合物を超分子重合と呼ばれる手法で一列に重ねることで、内壁がテフロンのように密にフッ素で覆われたフッ素化ナノチューブを開発しました。そして、フッ素ナノチューブのポイントは「塩を通さないが水は通す」という性質です。このことは透過膜を作る点で大きな研究テーマでした。フッ素ナノチューブでは、密なフッ素表面が水分子の結合を切断し、同時に塩化物イオンの進入を阻止するために圧倒的なスピードでの塩水の脱塩が可能となりました。この可能になった研究結果については、一般的にはアクアポリンと言われている細胞膜の水を透過させるという特別な性質を持つたんぱく質と同等の透過性能を目標としています。しかし、フッ素ナノチューブはアクアポリンの4500倍の透過性能を達成しています。これまでの水透過ナノチューブを開発するための指針はアクアポリンでした。しかし、今回の研究ではアクアポリンをメインとしたコンセプトではなく「水をはじくテフロンのような内壁を持つナノチューブを開発したら水はどのような透過挙動を示すのだろうか」という好奇心から派生したものでした。
「フッ素ナノチューブの使用方法」
あわせて読みたい記事:【地球温暖化対策】サハラ砂漠を緑化すると温暖化進行の意外な結果
「フッ素ナノチューブ」は、何に使用していくのでしょうか。もちろん海水の淡水化プラントでの使用です。アクアポリンの4500倍の効率を性能として持っているフッ素ナノチューブ。それを使用するということは次世代水処理膜として世界の水問題を解決することが可能ということではないでしょうか。とりわけ砂漠地域では降水による真水を獲得することは困難であり、真水を確保維持するというのは大きな問題です。されら砂漠地域における真水の確保は地下水からの汲み上げ方法が一般的ですが、地下水は枯れてしまうこともあります。また真水は、人間の飲料水としてだけでなく農業で作物を育てるためには必須です。しかも、農業用水は大量で安定的な真水の供給が求められている分野でもあります。ですから、食料問題を解決することにも貢献する開発分野なのです。水資源研究所(WRI)のカースティー・ジェンキンソン氏は、「過去1世紀の水の消費は人口増加の倍のペースで増えている。だれがどのように水を必要としているのか、どこでどのようにすればよいか最も効果的に消費できるかを考慮した総合的な水資源管理を生み出さなければならない。」とコメントしています。そして、2007年から2025年までの間に水消費は開発途上国で50%、先進国で18%増えると見込まれています。
この記事へのコメントはありません。