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【IHI・ラン藻吸着材】青ヶ島の海底熱水鉱床の金回収人工チムニー
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世界的にカーボンニュートラルが推進されているだけでなく、様々な情勢が不安定化し世界的な資源不足ということもあり、資源の確保が求められています。そのような中、日本は資源に乏しいと不安視さえされている状況です。とりわけエネルギー資源に加えて、金などの資源に注目が集まっています。しかし実のところ、日本は地下資源、海底資源となると世界有数の資源産出国となるのです。それが日本の東京の海底で貴重な資源である「金」が発見されたということが明らかになったのです。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、日本の東京の海底で発見された「金」に注目します。
「青ヶ島海底熱水鉱床の金」
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日本の東京の海底である、伊豆諸島最南端の「青ヶ島」の島の周辺の海域から高濃度の「金」を含む熱水が噴出したというのです。海洋鉱物資源の一種となる「海底熱水鉱床」の発見で海底から「金」を採取する開発が進んでいるということです。しかも、商用化まで進んでいるというのです。これは、世界初の海底の採鉱であり、揚鉱技術も成功しているというのです。2022年9月の調査結果をもとに商用化の判断が決定されるようです。この開発には、東京大学の研究チームが進めているということです。
「海底熱水鉱とは」
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「海底熱水鉱」:地下深部に浸透した海水はマグマなどによって熱せられており、海底から海面へと噴出してきます。そして、この噴出した熱水には金属成分が含まれているのです。さらに噴出した際に周辺の冷たい海水と接触すると、金属成分が析出、沈殿します。こうした形で形成されているのが、「海底熱水鉱」と呼ばれている資源です。また、熱水が噴き出す「熱水噴出孔」に含まれている「金」の濃度は、平均で1トンあたり17グラムということです。これは、世界の主要な金鉱山が1トンあたり3~5グラムということですから、非常に高濃度の「金」を含んだ「熱水噴出孔」ということになります。さらに未解明なものも含めると、日本には「海底熱水鉱床」が200か所以上も存在するということです。これは、日本列島がプレート付近に位置し火山活動が活発なために「熱水鉱床」に恵まれているということです。「鉱床」の中でも日本で有名なものは、沖縄本島沖の伊是名鉱床や奄美大島沖の天美サイトと呼ばれる「鉱床」が存在しています。
「熱水鉱床から金を回収するシステムとは」
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「熱水鉱床」が「青ヶ島」で発見されているとしても、高濃度の「金」を含む熱水から「金」をどのように回収するかが大きな課題です。この点をクリアするために開発されたのは、東北の温泉地で知られている「ラン藻」を使用して回収する方法です。植物の「藻」を利用して「金」を回収する技術は、筑波大学や産業技術総合研究所などのチームが開発しています。「IHI」は、その技術を応用して「藻」を乾燥させて粉末にしたものをシート状にした「金」の吸着材を開発したのです。シート状にしたのには理由があり、吸着率が向上することが理由のようです。2021年8月に「青ヶ島」の「熱水噴出孔」に「ラン藻」の採取装置を設置し、2022年9月に「藻」を回収する計画となっています。その時には、商用化の決定が下されるのか判断を要するようです。
「世界一の金鉱山は日本」
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海底だけでなく金鉱山が商用化されており、それは日本にあり世界一ということです。実際に過去においては「黄金の国ジパング」と呼ばれていた通り、新潟県の佐渡金山は、世界でも類を見ないほどの「金」が採掘されていたということです。ちなみに地球上の「金」の埋蔵量(採掘可能な金)は、2021年のデータによると54000トン、年間採掘量は3000トンと言われています。このデータからすると、採掘し続けると20年後には「金」は枯渇していることになります。しかし海水から「金」を採掘する技術が発展するなら「金」の埋蔵量というのは、大幅に増加されるということになります。
「現在も商業規模で採掘されている日本の金山」
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現在も商業規模で採掘されている日本の金山が存在していますが、それは1985年から採掘が始まった鹿児島県の「菱刈鉱山」で、日本の産金量の9割以上を占めており、生産量は年間約6トン、金鉱石1トンあたりの「金」の含有量は世界平均が3グラム程度ですが、「菱刈鉱山」では30グラム前後もあり、産金量は世界一となっています。これは総生産量において佐渡金山を超えた数字なのです。産出量と品質の高さゆえに世界的にも注目されているのが「菱刈鉱山」なのです。それゆえに「奇跡の金鉱山」とまで言われているようです。「JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)」は、この「菱刈鉱山」について有望な鉱山とみており、採掘を行っている「住友金属鉱山」に対して、7億3000万円の貸付を行っているということです。「菱刈鉱山」は、「鉱山操業技術の維持運用と継承」の面からも重要と見られているようです。
「日本の海底掘削技術の開発」
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これまでの日本の海底掘削技術の開発についてですが、「人工チムニー」の開発があります。「チムニー」とは、数千年という長い年月をかけて海底の「熱水噴出孔」に生じる煙突状に堆積したもののことです。海底に穴をあけることで「チムニー」を人工的に作り、金属を効率的に採取するための技術のことです。すでに沖縄県の海域の海底約1600mで海水と共に16トンもの鉱石を連続的に洋上へと揚げる「採鉱・揚鉱パイロット試験」を世界で初めて成功させているのです。しかしながら、この「採鉱・揚鉱パイロット試験」の技術は2022年の現状では実用化までには至っていません。2018年に経済産業省とJOGMECが出した「海底熱水鉱床開発計画 総合評価報告書」によれば「経済性の検討の結果、海底熱水鉱床の開発にかかる費用と収益を計算したところ、778億円の赤字で採算が取れない」ということです。
「海底掘削技術の商業化ポイント」
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海底掘削技術の商業化ポイントは、下記の点を挙げることが出来ます。
1:採掘コストを下げること
2:亜鉛より高品位で経済価値の高い金属を採取すること
この2つの条件をクリアして初めて商業化できるとされています。クリアするために開発されているのが、「ラン藻」による回収システムです。「ラン藻」は電力の供給を必要とせず、自然に「金」を吸着します。時間を要するものの、採掘コストを大幅に下げることが出来るゆえに注目されているのです。これは、コストが抑えられるだけでなく、環境にもやさしい吸着材とされています。さらに品質が高く経済価値の高い金属を採取するには有望な鉱床を探す作業が重要となっています。「青ヶ島」の「海底熱水鉱床」は「金」の含有率が高いことから採掘採算が取れることが確認できれば、商業化することは間違いないと言えそうです。2018年の報告書では「中長期的に金属価格の上昇が見込まれる中で採鉱システムでの技術革新などによるコストの削減と「質」、「量」ともに優れた鉱床の発見によって将来における「海底熱水鉱床」の開発可能性は、高まるものと期待される」と記載されているようです。実際、20年前と比較すると金の価格は、およそ7倍に上昇しており高騰しているのです。
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