【レーザー核融合】クリーンエネルギー次世代発電システム開発詳細

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【レーザー核融合】クリーンエネルギー次世代発電システム開発詳細

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地球温暖化問題など環境に配慮し世界中でカーボンニュートラルが推進されている中で、CO²を排出することなく電力を大規模に供給することができる次世代発電システム。その一つが、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーと違い、電力需要に合わせて発電量をコントロールすることが可能となる「レーザー核融合発電」で、現在、フランスにおいて実験炉が建設されています。日本においては、どれほど開発が進められているのでしょうか。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、クリーンエネルギーとして開発がすすんでいる「レーザー核融合発電」に注目します。


「核融合発電のシステム」

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「核融合発電のシステム」には2つの方式が存在しています。

「磁場閉じ込め方式」:強い磁力線を発生させてプラズマを閉じ込める「磁場閉じ込め方式」。

「レーザー方式」:強力なレーザーを燃料に照射することで核融合を起こさせる「レーザー方式」。

燃料である重水素(2H)と三重水素(T)は、どちらも水素の同位体で水素(H2)の仲間。レーザー照射を受けた燃料の外側は高温となり数千万気圧もの圧力が発生するために球状の燃料は中心に向かって圧縮される。この現象を「爆縮」といい瞬間的に核融合反応を起こすことになる。つまり、光で熱を生み出す仕組みです。直径は、5㎜の球状の燃料に強力なレーザーをあらゆる方向から照射する。1968年にロシアでは、「レーザー核融合」を行っていたようです。「レーザー核融合」は、増減する日本の電力需要に合わせて発電量をコントロールすることができ、再生可能エネルギーの風力発電や太陽光発電のように自然の影響を受けることなく電力を供給することが可能なのです。


「レーザー核融合の安全性」

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「レーザー核融合」の安全性についてですが、原子力発電と比べると核分裂反応によるエネルギーと廃棄物を発生させる原子力発電には、2つの問題があります。1.制御不能であること。2.高レベルの放射性廃棄物。原子力発電の燃料である「ウラン235」は、勝手に分裂し続けるためにコントロールできず人間の手では止めることができない。それに比べて、核融合は制御可能です。燃料をぶつけて融合させるので装置が止まれば反応も終了することになります。核廃棄物においても核融合で生成される「トリチウム」は低レベルの放射性物質で原子力発電と比較しても安全性が高いとされています。


「世界で核融合ベンチャー企業への投資が加速」

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日本ではマイナーな存在ですが、世界で核融合ベンチャー企業への投資が加速しているのです。日本では、「レーザー核融合商用炉」の実用化を目指している民間企業の「EX-Fusion」が、ベンチャーキャピタルの「ANRI」から1億円の資金調達を行っています。調達資金は商用炉に必要な装置を開発に使用され「繰り返し安定的にプラズマ状態を作り出すこと」を目標としているようです。


「海外の核融合開発」

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フランスで建設中の国際熱核融合実験炉「ITER」は2025年に運転開始予定となっています。そして、この「ITER」計画をサポートしているのは、日本、ヨーロッパ各国、アメリカ、ロシア、韓国、中国、インドの7極です。その中の中国は建設工事に使用する18種類の大型部品の製造、納品を担っています。「ITER」の装置は複雑な構成で先導技術によるサポートが必要ということです。「ITER」の「ベルナール・ビゴ」機構長は、中国に「非常に素晴らしい提携パートナーです。期日通りに品質の良い部品を納品しており提携者の中で模範的な存在」とコメントしています。また核融合に関する欧州共同プログラムの責任者も「中国は短期間のうちに核融合科学の分野で重要な存在になった」とコメントしています。中国の核融合技術の向上に並行して巨大科学工学プロジェクトの管理水準も大幅に進歩しているということです。これには中国が国家基幹研究の1つにレーザーと取り入れていることも関係していることでしょう。また韓国は「高出力レーザー」の研究において急成長しており世界からも注目されています。


「レーザー核融合の開発に参加する日本」

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「ITER」で使用する「ジャイロトロン」という機器は、実験炉の中の中核部品ではあるものの製造については、日本とロシアのみ製造し、どちらかの機器が使用されている予定になっています。これとは異なり、アメリカは開発に失敗し撤退したようで、ヨーロッパ各国の製品としてジャイロトロンは開発が遅れています。ちなみに「ITER」が実験炉として機能するためには燃料である「重水素(ジュウテリウム・2H)」と「三重水素(トリチウム・T)」は、安定供給のために欠かすことは出来ません。「ジュウテリウム」は海水から抽出することができますが、「トリチウム「は極めて希少な物質です。「トリチウム」を生産するためには「リチウム(Li)」に中性子を当てて「ヘリウム」と「トリチウム」を生成する。そして必要される「リチウム」はアメリカとアフリカに遍在する資源で絶対量も少ない貴重なもの。アメリカには「トリチウム」を使用せずに「水素」と「ホウ素」を使用する核融合炉も存在しています。


「核融合発電の問題点とは」

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問題となっている課題は2つ。

1、「高効率化」:核融合反応の発生効率を上げるにはレーザー投入エネルギーに超える、核融合出力が必要となります。日本では世界に先駆けて「高繰り返しレーザー」による核融合研究が始まっているようです。「浜松ホトニクス」では、「パワーレーザー装置」を開発。小型ながら高出力、高繰り返しでレーザー照射。また「大阪大学レーザー科学研究所」では、「高速点火方式」と呼ばれているレーザーで「高密度核融合燃料」を追加熱するために実験が行われているようです。

2、「エネルギー回収システムの構築」:小型レーザー核融合実験炉「CANDY」で実験が続けられています。核融合発電の実用化を世界に示すために「光産業創成大学院大学」が「浜松ホトニクス」、「トヨタ自動車」と共に「CANDY」の開発を行っています。

これまで核融合の実用化に向けた研究開発は国主導で進められていましたが民間主導の取り組みも多くなっています。「京都フュージョニアリング」、「EX‐Fusion」、「Helical Fusion」の3社は、それぞれ核融合の実用化に向けて開発を進めています。

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。