【ナノインプリントリングラフィー】半導体回路形成技術による国家戦略

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【ナノインプリントリングラフィー】半導体回路形成技術による国家戦略

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現在、世界的な資源不足と言われる中、取り分け生活のあらゆるものに使用されている半導体不足は深刻な状況となっていると言われています。そのような中、世界的な半導体メーカーとして有名な台湾の半導体メーカーが日本に工場を建設するということです。その交渉費は約1兆円とも言われています。そして、半導体回路形成の新しい技術の「ナノインプリントリングラフィー」というものが発表されています。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、「ナノインプリントリングラフィー」や「SONY(ソニー)」が出資している「TSMC」に注目します。


「ナノインプリントリングラフィーとは」

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この「ナノインプリントリングラフィー」とは、半導体回路形成の新しい技術のことで「キャノン」や「キオクシア」や「大日本印刷」が共同開発した技術です。この「ナノインプリントリングラフィー」は、半導体の回路を回路パターンを刻み込んだものを樹脂に押し当て製造している。そして、紫外線や熱による化学反応、冷却で硬化させることで転写が可能となっています。つまり例えるならばハンコを押すような形で半導体の回路を形成する。この形成によって現在と比べて大幅に半導体製作の工程を削減できるということです。実用化されれば、設備投資を数百億円。製造コストならば最大で40%も減少させることが可能ということです。


「ナノインプリントリングラフィーの実用化問題とは」

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開発が進んでいくことが期待されている「ナノインプリントリングラフィー」ですが、現状では実用化に至るまでに下記のようないくつかの問題があるということです。

テンプレートの製造:テンプレートの製造の際、細かい凹凸の金型のnmオーダーが難しいとされています。このテンプレートのくぼみに部分に樹脂が綺麗に装填されないといった問題もあるようです。さらにテンプレートを剝離する際に樹脂が剥離してしまうということもあるようです。またテンプレートに少しの欠けや埃があるだけで回路を形成することが難しいとされています。


「大日本印刷のテンプレート量産複製装置」

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「大日本印刷」が「テンプレート量産複製装置」を導入することを発表。そして装置の仕様値による内部シミュレーションを実施しています。結果として工程がシンプルとなったことで、1ウエハーあたりの消費電力をEUV露光使用時と比較して10分の1程度にできることが判明しました。ウエハーは半導体の材料になる、半導体物質でできた結晶の円形の薄い板のようなもの。また「ナノインプリントリングラフィー」は、様座な技術への応用も行われています。比較的単純な形状の反射防止構造や撥水構造の作成に応用されており、ディスプレイの応用、スマホ用小型レンズなどでは産業化されているのです。光の干渉、解析を複雑な現象により制御して実現した構造色やプラズモンやメタマテリアルを利用したナノ光学構造など幅広く応用されています。


「いつ世界的な半導体不足は終わるのか」

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世界的な半導体不足のきっかけは、下記のようにいくつかあると言われています。

「パンデミック(新型コロナウィルスの流行)」:サプライチェーンの混乱や物品が売れなくなったことで半導体製造工場ではリストラが相次ぎ、人手不足となってしまった。

「リモート勤務」:リモート勤務が浸透しパソコンなどIT機器の需要増しによる半導体不足。

「北米の大寒波」:電気の供給が困難となる状況が生じた。その影響で工場を停止せざるを得ない状況となり半導体供給が滞ってしまったこと。

「日本メーカーのルネサス」:日本の国内メーカーで半導体メーカーの「ルネサス」の工場火災。この工場は、自動車メーカーの「トヨタ」の半導体を請け負っていったために、火災前の生産に戻るまでに4か月を要しています。

「東南アジアでのパンデミック」:工場閉鎖に追い込まれている。実に東南アジアには半導体製造の後工程(最終パッケージ作業のこと)の工場が集約している。半導体の生産というのは、設計して加工した後、ウエハーからチップを切り離し、樹脂にモールドすることで完成。そのモールドするパッケージ作業、つまり後工程が停止している状況。

「米中貿易摩擦」:輸入出の制限によって流通が減少しています。しかも、中国からベトナムに生産拠点を移管している企業も多いです。

「生産国の電力問題」:半導体の生産メーカーの最大国に中国がありますが、発電所の稼働問題を抱えており電力不足となり生産が減少しています。

「輸入出のコンテナ船不足」:例えば、アメリカでは湾岸作業員の不足によってコンテナの稼働率が減少し出荷が滞っている状況。


「TSMCとSONY(ソニー)による国家戦略」

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半導体の受託生産するファウンドリーの世界最大手「TSMC」。「TSMC」社は、台湾積体電路製造で日本に工場を建設するを発表。建設場所は熊本県。ちなみに「ソニー」は約570億円の出資しています。「ソニー」は「CMOSイメージセンサー」と呼ばれている半導体チップで世界シェアの50%以上を獲得しています。用途としてはスマホのカメラで全体の売上高の80%を占めているということです。画像を取り込むチップと信号を処理するチップを張り合わせる2階建構造。その中で、信号処理の部分は外注しているようです。これによって「ソニー」の独自技術を日本国内で効率よく生産。これは、画像センターの技術を持つ「ソニー」が日本の国家安全保障を高めることにもつながるのです。日本政府自体、デジタル化や脱炭素など4分野に重点を置き、半導体を戦力物資と位置付けています。成長戦略には、経済安全保障の観点から半導体の製造拠点を誘致する目標を盛り込みアメリカや台湾の有力メーカーと日本企業の連携を後押しする方向も決定しています。また国内に生産拠点のない40nm未満の先端ロジック半導体について設計やテストから生産まで行うことができる工場があると日本の半導体応用技術は飛躍的に発展すると期待されています。

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管理人:TMM

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。