【パワー半導体】ローム株式会社、富士電機、FLOSFIAの技術

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【パワー半導体】ローム株式会社、富士電機、FLOSFIAの技術

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再生可能エネルギーの普及によって需要が急拡大している半導体市場。世界的な半導体不足が問題となり、自動車、家電製品、電子機器などのあらゆる工業製品の生産に影響を及ぼしています。そのような中、日本が画期的な半導体技術を開発し世界から注目されています。その技術とは「パワー半導体」です。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、日本の技術であるパワー半導体開発に取り組む「ローム株式会社」、「富士電機」、「FLOSFIA」に注目します。


「パワー半導体とは」

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この「パワー半導体」とは電力の制御や変換を行う半導体の総称でパワーデバイスとも言われているものです。電子機器において高い電圧や大きな電流を扱うことが出来る半導体で、通常の半導体とは異なった構造を持っています。この「パワー半導体」はスマートフォンやタブレット端末、パソコン、テレビやエアコン、冷蔵庫といった一般家庭向けの機器にも使用されています。加えて、電気自動車や鉄道、太陽光発電、風力発電など幅広く使われているデバイスです。


「パワー半導体の世界市場」

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富士経済が2022年5月に「パワー半導体」の世界市場を調査したところ、「パワー半導体」の市場は2022年の見込みは、2兆3386億円に対し、2030年には5兆3587億円規模に拡大すると予測結果が発表されました。5G関連などの情報通信機器分野の需要拡大や中国、ヨーロッパ各国における自動車・電装分野の需要増加などもあり、2021年は2020年に対して20.7%も増加しています。しかしながら、「パワー半導体」の需要が拡大し世界的な半導体不足となっている問題もあります。実際に「トヨタ自動車」は「世界的な半導体不足で国内の2つの工場の稼働を一時停止する」と発表しニュースで大々的に取り上げられていました。


「次世代パワー半導体とは」

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世界的な半導体不足もあり、新素材を使った次世代パワー半導体に注目が集まっています。次世代パワー半導体とは、「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」、「窒化ガリウム(GaN)パワー半導体」、「酸化ガリウム(Ga203)パワー半導体」の3つのことです。「パワー半導体」はシリコン素材が主流となっていますが、シリコンよりも電気を通しやすく、電力損失が発生しにくい高電圧に対応している点がメリットの1つです。例えば、「炭化ケイ素(SiC)」はシリコンの半分を炭素に置き換えた化合物となっています。この素材は従来のシリコンデバイスより耐圧が10倍となり、200℃を超える高温にも耐えられると言われています。さらにシステムの小型化、軽量化のメリットもあります。高耐圧で低損失、低コストが可能な点、注目されています。それゆえに世界中で開発競争が激化しています。応用研究や各企業における量産技術の開発を行うフェーズに入りつつあるとされています。


「ローム製・窒化ガリウム(GaN)パワー半導体」

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日本の「ローム株式会社」が、「窒化(GaN)パワー半導体」の量産化に入ったということです。「ローム株式会社」は京都にある電子部品メーカーです。車載や家電、スマートフォンなどに使われている「パワー半導体」を生産する会社です。「トヨタ自動車」や「日産自動車」などの大手自動車関連企業をはじめ、「アップル」、「ソニーグループ」など幅広く顧客を抱えています。1971年には、アメリカのシリコンバレーに日本企業で初めて進出するなど先駆者として市場開拓しています。2000年代には、世界最高性能のアナログ技術である世界最小サイズの電子部品RSMIDシリーズを筆頭に成長してきました。そして、LSI(大規模集積回路)生産会社の「ローム浜松」に新設備を導入し、150ボルトに耐えられる「窒化(GaN)パワー半導体」となる「窒化ガリウム(GaN)製光電子移動度トランジスタ」を量産する予定を発表しました。この「窒化(GaN)パワー半導体」は、ガリウムと窒素の化合物であり、「ワイドバンドギャップ半導体」とも呼ばれています。「ワイドバンドギャップ半導体」は、物質としての耐久性が高いと言われており、高温動作にも耐えられるメリットがあり、高電圧にも壊れにくく大電流を流すことが可能となっているのです。「窒化ガリウム(GaN)」は、素材そのものの性能指数はシリコンに対して1130倍の高性能となっています。


「ローム製・炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」

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「ローム株式会社」は、他にも「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」も注力しています。「ローム株式会社」の松本社長は「2025年までに炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の売上高を1000億円以上に引き上げる。約1500億円を投じ、同半導体の生産能力を21年度比約6倍にする。2025年までに炭化ケイ素(SiC)パワー半導体で世界シェア首位を目指す」と発表されています。世界各国で二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を「ゼロ」にする「カーボンニュートラル」が推進されています。そのために自動車メーカーが脱炭素化社会を実現するために走行時に二酸化炭素を排出しない電気自動車の投入を増やしました。この事実が世界中の半導体不足の一端に繋がっているようです。そして、電気自動車と「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」は相性が良いとされています。「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」は、バッテリーからの直流の電気を交流に変換してモーターを駆動する際に起きる電力損失を低減することが出来るということです。シリコンを使ったパワー半導体に比べると効率が約10%改善し、ガソリン車の燃費に当たる「電費」も改善されます。これによって電池の小型化や電気自動車のコスト削減にもつながるようです。そのために電気自動車の需要が高まっている現在、相性の良い「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の需要も自然と高まっています。しかしながら、松本社長は「モノ作りがアナログ的で経験の蓄積が求められるので、量産は非常に難しいのです。シリコン基板に比べて量産コストが2~3倍高いことが課題です。」と「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の供給バランスについてコメントされています。それでも、「現状の直径150ミリの基板サイズが今後は200ミリに拡大します。そうすると1チップ当たりのコスト削減が可能になります。」とも松本社長は述べておられます。


「ローム株式会社の世界シェア」

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「ローム株式会社」は「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の世界シェア4位。首位がスイスとなっています。「ローム株式会社」は25年度にシェア率を30%引き上げて世界1位を目指しているということです。このために高い技術力と量産化が必須となるようです。


「富士電機・炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」

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富士電機は2022年中に長野県にある松本工場で電気自動車の「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」を量産することを発表しました。鉄道向けに「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の納入実績を持つ「富士電機」ですが、量産タイプの完成車向けは初の供給となるということです。需要に対応するために子会社の「富士電機津軽セミコンダクタ」に「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」生産の6インチラインを準備中と発表しています。そして、2025年度には「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の事業売上高の10%前後まで伸ばし、市場シェア2%の獲得を目指すとしています。


「FLOSFIA・酸化ガリウム(Ga203)半導体」

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京都大学から誕生したベンチャー企業「FLOSFIA」は、「酸化ガリウム(Ga203)半導体」開発に取り組んでおり、2030年には1000億円の売上高の見通しを発表しました。実のところ、「酸化ガリウム(Ga203)」の優良性を見つけ出し、世界初の「酸化ガリウム(Ga203)半導体」を2010年からの研究を通して開発したと言われています。研究開発は、国立研究開発法人の情報通信研究機構と田村製鉄所、京都大学の3社によって行われたということです。「酸化ガリウム(Ga203)」はシリコンの3000倍、炭化シリコンの6倍、窒化ガリウム(GaN)の3倍の性能指数があるということです。そして、「FLOSFIA」の技術は特許申請が200件以上もあるということです。

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。