【US-2】新明和工業が開発した世界唯一の水陸両用飛行艇の秘話

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【US-2】新明和工業が開発した世界唯一の水陸両用飛行艇の秘話

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世界で唯一の存在となる「水陸両用飛行艇:US-2」。現在のところ、海難事故発生時の救助を目的に防衛省海上自衛隊で運用されている飛行艇です。波高3mの概要でも離着水が可能という高性能なスペックを備えています。この「水陸両用飛行艇:US-2」は非常にポテンシャルが高く世界から注目されています。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、高性能スペックを誇る「水陸両用飛行艇:US-2」に注目します。


「水陸両用飛行艇とは」

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日本の「新明和工業」が開発した世界唯一の高性能を誇る「水陸両用飛行艇:US-2」。飛行艇について簡単に振り返ると、飛行艇は飛行機と船の両方の性能を持つ飛行機のことを言います。飛行機自体は、陸上から加速して離陸し飛行しますが、飛行艇は陸上だけでなく海面での離着水も可能とします。それゆえに日本の飛行艇は海上自衛隊で海難事故の救助活動のために利用されています。ちなみに「水陸両用飛行艇:US-2」の前身モデルとなる「水陸両用飛行艇:US-1」から数えると出動実績は累計で1000回以上となっています。飛行艇の始まりは1915年のアメリカで世界初の旅客飛行を就航したことから始まりました。そして、飛行艇の全盛期は1930年代でした。当時の大型飛行機は、着陸時の衝撃に耐えられる装備を製造することができないほどの技術でした。このために当時は大型の飛行機を就航させることは困難とされていました。しかし、着陸時の衝撃問題を解決したのが飛行艇というわけです。飛行艇は船底が大きく、着水時の衝撃を和らげることが出来、当時の大型飛行機にあった技術的な問題を解消できました。大型飛行艇によって豪華で快適な空の旅を提供することが可能となったのです。日本においては、サイパン島などへの航空路には飛行艇が使用されていたということです。第二次世界大戦後には技術進歩によって大型飛行機でも離着陸が可能となりました。このために世界大戦後には、飛行艇の旅客機としての役目は終わりを迎えてしまいます。またヘリコプターの技術も発達したために海上救難でも飛行艇の必要性は薄れていきました。それでも飛行艇は、飛行場のない島や遠方の島、遠方の海域への飛行時には、いまだに必要となっています。小笠原諸島などの飛行場のない島への緊急輸送には飛行艇は必須です。またヘリコプターでは辿り着けない遠方の島や海域でも活躍できます。このようにして飛行艇は時代に合わせて役目を変えながら活躍してきました。現在の日本では、「新明和工業」が開発する「水陸両用飛行艇:US-2」が唯一の飛行艇として活躍しています。


「水陸両用飛行艇:US-2のスペックとは」

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「水陸両用飛行艇:US-2」ですが、どのような技術や装備が搭載されているのかスペックに注意を向けてみます。もちろんのこと悪天候時にも安全に飛行できるように高度で最新の装備が搭載されています。「救助性」、「耐波性」、「極低速離着水技術」の3つを調べてみます。

「救助性」:海難救助で活躍する「水陸両用飛行艇:US-2」は、「与圧キャビン」という技術が導入されています。「与圧キャビン」によって「水陸両用飛行艇:US-2」は迅速な人命救助が可能となっています。「与圧キャビン」は室内を密閉し、圧縮した外気を送ることで室内に圧力を加える技術のことです。飛行機は高高度で飛行します。これは、高度が高くなると空気抵抗が小さくなり、効率的な高速飛行が可能となるからです。しかしながら、高度が高くなると酸素も気圧も薄くなってしまうという問題があります。この状況では救助された人が登場されている場合、環境は良いとは言えません。しかし、「与圧キャビン」が導入された「水陸両用飛行艇:US-2」であれば、荒天でも患者に負担をかけずに高高度を高速で飛行することが可能です。この技術が導入されているために、より遠く、より速く、広範囲での救助活動が可能となるのです。

「耐波性」:「水陸両用飛行艇:US-2」には耐波性を向上させる独自の技術として、「溝型波消装置」と「スプレー・ストリップ」が採用されています。「溝型波消装置」とは、船底のフチに設けられた溝のことです。通常の飛行艇は、着水時の飛沫がプロペラやエンジンまで舞い上がってしまい、機体の安定性が損なわれてしまうデメリットがあります。しかし、「溝型波消装置」があれば舞い上がる水流を下方に逃がすことができ、安定性が向上するのです。「スプレー・ストリップ」とは、船底に設けられたプレートのことです。「スプレー・ストリップ」は水流を横に流す目的で設けられています。この2つの技術によって着水時の機体損傷を防ぐ「高耐波性」を備えているのです。

「極低速離着水技術」:世界で唯一実用化された「境界層制御(BLC)」という技術が採用されています。これによって約90km/hという極低速でも、「水陸両用飛行艇:US-2」は離着水が可能となっているのです。「境界層制御(BLC)」とは、翼の後端にあるフラップから圧縮空気を噴き出す技術のことです。主翼から噴き出すことで大揚力を得ることが可能となり尾翼から噴き出すことで舵を安定させることができるのです。

このように「水陸両用飛行艇:US-2」は「耐波性技術」、「極低速離着水技術」によって「波高3mでの離着水を可能」としている世界で唯一の飛行艇なのです。


「塾生の域に達した完成された性能が与えられた水陸両用飛行艇:US-2」

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「水陸両用飛行艇:US-2」は8年もの間、改造開発されながら完成の域に達しました。

「短距離での離着水(陸)が可能」:一般の旅客機では、離着陸は長い滑走路が必要となります。しかし、「水陸両用飛行艇:US-2」は、離陸は約490m(離水:約280m)、着陸は1500m(着水:約330m)で可能ということです。ちなみに「水陸両用飛行艇:US-2」の離着水の距離の性能は他の飛行艇にはない特徴であり、性能です。

「巡航速度」:ヘリコプターの巡航速度は260km/hですが、「水陸両用飛行艇:US-2」は約480km/hの巡航速度の性能です。

「航続距離」:ヘリコプターの航続距離は約850kmですが、「水陸両用飛行艇:US-2」は約4700kmの航続距離を誇ります。


「新明和工業のUS-2開発経緯」

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「水陸両用飛行艇:US-2」を開発している「新明和工業」の歴史は、1920年に「川西機械製作所」に飛行機部を設置したことから始まります。「川西機械製作所」は創業から1945年までに2800機以上の航空機を生み出した日本有数の航空機メーカーです。しかし、日本は戦後に航空機の製造が禁止され「川西機械製作所」は航空機以外の製品開発を必要とされました。そして、社名が「新明和工業」に改名され1952年に航空機の開発や生産が解禁されたことで「新明和工業」は航空機の開発に再度着手したのでした。当時の海外メーカーの飛行艇が荒波に弱いという弱点があったことから「耐波性」の高い飛行艇を目指して開発が始まりました。そして、1966年に独自の技術を持つ「水陸両用飛行艇:US-2」の前身モデルとなる「PX-S」が完成しました。「PX-S」から当時の防衛庁と正式契約が結ばれています。ここから「新明和工業」の高性能飛行艇の歴史が始まりました。そして、現在の「水陸両用飛行艇:US-2」の開発に技術が継承されているのです。

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未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。