【東芝・量子暗号通信】量子コンピュータ以上のデータ性能で商用化

この記事は4分で読めます

【東芝・量子暗号通信】量子コンピュータ以上のデータ性能で商用化

あわせて読みたい記事:【東芝・SCiB】チタン酸リチウム電池で世界EV市場で需要拡大

あわせて読みたい記事:【東芝・小型高速炉4S/超臨界CO²サイクル発電】再エネ利用発電

あわせて読みたい記事:【日本の水素エネルギー】特許数世界1位の水素技術でトップシェア

情報化社会とされる現代ですが、「東芝」が世界初の量子暗号通信の商用化に成功したことを発表し世界から注目されています。この技術によって秘匿性の高い通信技術がさらに向上したことになります。現在、広く利用されている「RSA」や「AES」といった暗号方式は、計算量的に安全な暗号方式と呼ばれており、現実に利用可能な計算能力を最大限投入したとしても暗号文や秘密鍵を現実的な時間で解読することは困難であることを理由に使用されています。しかしながら、計算能力が高ければ解読されるということを意味していることにもなります。コンピューターの性能が向上していくと安全では無くなるということになります。こういったことから注目されているのが、「量子暗号通信」です。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、「東芝」が商用化に成功した「量子暗号通信」とは一体どのようなものなのか注目します。


「量子暗号通信の今後の可能性」

あわせて読みたい記事:【住友電気工業】永久電流の超電導接合・iGS®接合/NMR装置

「東芝」と「東芝デジタルソリューションズ」とイギリスの通信事業者「BTグループ」は、ロンドンで「量子暗号通信」の商用化のためにメトロネットワークのトライアルサービスの提供を開始しました。「量子暗号通信」で複数の拠点を結ぶ通信環境をサービス提供するというのは世界初の出来事です。「BTグループ」のオープンリーチが提供する光ファイバー網を使用して「東芝デジタルソリューションズ」が「量子暗号通信」のためのQKDシステムと鍵管理システムを提供することになっています。現在の社会システムとしては、多くの機密データがクラウドのような遠隔のコンピューター・サーバー上に保管されることによってネットワーク上のデータへのアクセスを保護することが重要な課題となっています。その中でデータ通信の安全性は、ネットワーク上で送受信される情報の暗号化方法によるという状態です。他の者から解読されないための暗号通信であり、そのための開発が続けられています。しかしながら、データの暗号化を複雑化することによって暗号化は限界点に近づきつつあるとされています。


「量子暗号通信とは一体何なのか」

あわせて読みたい記事:【ダイヤモンド電池/半導体】核廃棄物の再利用で電池寿命は3万年

「量子暗号通信」は、「絶対に安全な暗号化手法」として注目されている技術です。量子物理学の基本原理は、「粒子の位置と運動量を同時に確定することは出来ない」というハイゼンベルグの不確定性原理と「量子は観測することにより発生する相互作用でその状態を変える」という2つの法則です。とりわけ不確定性原理の法則は絶対に安全な暗号化手段の根拠となっています。傍受された粒子は、「量子は観測することにより発生する相互作用でその状態を変える」という法則によって、既に性質が変わってしまっているため送信者が送ったものとは異なっています。つまり受信者と送信者がお互いに量子を送り確認した際に盗聴している粒子の状態が変化してしまっています。これによって盗聴を検知することが出来るというわけです。実際の「量子暗号通信」に使用されるのは光子で、実際には「色」や「形」にあたるものとしては位相や偏光、スピンなど様々な手法があります。簡単に理解すると、従来の暗号のように「暗号解読が困難であるために事実上解読不可能」ということではなく、物理学的に盗聴されていないことが保証されているということです。


「東芝の量子暗号通信の性能」

あわせて読みたい記事:【アダマンド並木精密宝石】高純度ダイヤモンドウエハ半導体の実現

「東芝」は、欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所で2003年に量子暗号についての研究を始めてきました。その中で「量子暗号通信」の弱点である通信距離とスピードの向上を重点的に行ってきました。「東芝」は、その中で2004年に100kmを超える光ファイバー上の量子鍵配送を実現し、2010年に鍵配送速度を1Mbit/秒を超えることに成功しています。さらに2017年には10Mbit/秒を超える速度を達成しました。通信距離としてこれまでの通信距離100-200kmから世界最長の600kmに向上させ実用化に向けて大きく進歩させました。2021年の時点で「東芝」は、この分野の特許数が世界でトップとなっています。


「すでにアメリカでは実用性を確認済み」

あわせて読みたい記事:【ナノインプリントリングラフィー】半導体回路形成技術による国家戦略

「量子暗号通信」の活用分野として挙げられているのが、金融分野です。高速大容量かつ低遅延なデータ伝送が厳しい制限となる金融分野は、盗聴者を即座に検出、防御できる「量子暗号通信」の活躍が期待されているのです。そこで「東芝」は、「アメリカJPモルガン・チェース」と「アメリカシエナ」の3社でアメリカで初めての金融アプリケーションの実行基盤で実証実験を行いました。この結果によると最大100kmの距離で実用レベルの800Gb/sの伝送速度で暗号通信が可能であることを示すことに成功しました。この成功によって金融分野で「量子暗号通信」の有効性が示されました。


「世界の量子暗号通信開発について」

あわせて読みたい記事:【酸化ガリウム半導体】タムラ製作所開発で世界トップの半導体とは

「量子暗号通信」の分野は世界各国が開発のために注力していますが、とりわけ急速に成長しているのは中国です。中国が作り上げた「量子暗号通信網」は、「量子時代のスプートニクショック」と言われており、脅威となっています。このスプートニクショックとは、ソビエト社会主義共和国連邦が1957年10月に人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功したことです。その時点でアメリカは、「ソ連のロケット開発技術は劣る」という見方をしていたためにショックは大きなものでした。その時と同じようなことが「量子暗号通信」でも起きているというわけです。中国は上海市から北京市までの2000kmのネットワーク、さらに上海市、合肥市、済南市、北京市といった中核都市内には網の目のように「量子暗号通信網」が張り巡らされたネットワークを作り上げているとされています。さらに宇宙空間にも展開しており、2016年に世界初の「量子暗号通信衛星」である「墨子号」を打ち上げ、ネットワークは中国の南山区と中国の興隆県を結ぶ2600kmにもなっているのです。これによって中国は、「新華社通信」や「中国工商銀行」、「国家電網」などが機密情報を送受信のために活用しているということです。また軍事面では、「CRDSシステム・情報科学技術ユニットフェロー」の「嶋田」氏は、「量子暗号通信でやりとりされる情報は大規模な量子コンピューターが実現できたとしても物理法則上、絶対に暗号を解読できない。そのような盗聴しようのないネットワークを中国は長大な規模で実現してしまった。アメリカなどにとって安全保障上のバランスが崩れたことを意味する。」とコメントしています。通信網の整備においては中国が先行しているということになります。しかしながら、通信の信頼性という面では日本やヨーロッパ各国、アメリカが上回っているということです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

カテゴリー

管理人:TMM

管理人:TMM

未来に残したい、繋げたいをテーマに日々を過ごすことに夢中。そのテーマに自然界、歴史、科学、教育など、あらゆる方面から未来と過去を行き来出来たら、現在どうなっているか、これから先どうなるのか気になることが多く、今更ながら様々な分野を勉強中。