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【UC個体材料】日産が開発した人工光合成の効率を2倍の技術開発
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世界的なエネルギー問題、環境問題のゆえにカーボンニュートラルが推進されていますが、新技術が発表されて注目となっています。それは、「個体フォトンアップコンバージョン材料」と呼ばれる「UC固体材料」で。この個体材料を活用すれば、人工光合成の効率を「2倍」に高められる可能性があると考えられています。これは、「日産自動車」が「東京工業大学」と光の短波長化材料である「個体フォトンアップコンバージョン材料」を共同開発したことを発表したことで明らかになりました。これは、長い波長の光を16%の量子効率で短い波長の光に変換できるというもので、エネルギーとして活用することで製造現場での省エネに繋げようというものです。生産過程でのエネルギー消費を抑えることは非常に重要です。エネルギー消費を抑えることはシンプルに生産コストの低下に繋がります。さらには温室効果ガスの排出量を低下させることで地球環境保護にも繋がります。そこで今回の「TimeMachineMuseum」では、「日産自動車」が開発した「個体フォトンアップコンバージョン材料」と呼ばれる「UC固体材料」に注目します。
「UC固体材料とは」
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「日産自動車」が「東京工業大学」と共同開発した、光の短波長化材料である「固体フォトンアップコンバージョン材料」は「UC固体材料」とも呼ばれています。「UC固体材料」は人工光合成用光触媒などで未利用の長波長光を利用可能な短波長の光に変換することで効率を高めることができるというものです。実は、光というものには「波長」と呼ばれるものがあります。「青」、「緑」、「赤」の光を目で感知して人は世界を見ていますが、光は「青」、「緑」、「赤」の光だけで構成されているわけではありません。光というのは、たくさんの波長が存在しており、その中で人間が感知できるのは、ごく一部であると言われています。エネルギーの観点で考えると、波長が短いほど光子1粒あたりのエネルギーが大きくなるということが実証されています。しかしながら、現状の太陽光発電などでは各材料に固有の「ある波長」より短波長側の光のみが利用され、それより長波長側の光は利用されず損失となっているという状況になっているのです。つまり、太陽光のエネルギーのうちの一部しか利用できておらず、それ以外の波長の光エネルギーは活用できていないということになるのです。
「UC固体材料の特徴とは」
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「UC固体材料」低エネルギーの光子群、より高エネルギーの光子群に変換するというテクノロジーです。このアイデアを実現するために従来は分子を有機溶剤などに溶かした液体系の研究が多く行われていました。しかし、有機溶剤は液体であるために溶媒の蒸発、着火、沸騰などのリスクがともなうことから固体の素材開発が行われています。長波長の光子をキャッチする「増感分子」と、その励起状態を受け取って短波長シフトした光子を出す「発光分子」を組み合わせて行われるのですが、増感分子同士が凝集してしまうという現象が発生してしまいます。この問題の解決には液系の方が解決しやすいということが言えたのです。そのような中、「固体」で作り上げるためには、増感分子同士が凝集し始める前に固体にしてしまうという考え方による方法が試行錯誤されてきました。しかし、その方法では一般に欠陥を多く含む微結晶紛であり、励起エネルギーが材料中をよく伝搬しないために低効率というものを作り出すことしかできなかったのです。それが今回の研究では「二成分があるときは、わずかでも互いに混ざり合う方が安定」という法則をベースに研究が行われてました。「増感分子」と「発光分子」を混ぜたときの安定状態を整理し、結晶中に溶液のように溶け込んだ固溶体相の選択的生成を追求し、「固体でありながら受け渡しがうまくいく状態」を追求しました。その結果、長波長光を高い効率(理論上限値:約30%)で、短波長光に変換できる材料でありながら気中における長時間の光照射に対しても極めて高い安定性を有するという応用性の高い素材開発に成功したのです。
「人工光合成とは」
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「UC固体材料」の使用先として期待されているのが「人工光合成」です。光合成は植物が光エネルギーを使用して水と二酸化炭素から有機物を合成することです。しかし、「人工光合成」の場合は、太陽光後ヵらで水を分解することで水素を作り出し、その水素と二酸化炭素を反応させて有用な物質を合成するというものです。「UC固体材料」は、「これまで活用できていなかった太陽光の光の波長」を使用できるようにするものです。太陽光を無駄なく効率的に使用できるということは「人工光合成」にこれを導入した場合、効率の向上を狙うことができると言えるのです。この個体材料を活用すれば「人工光合成」の効率を「2倍」に向上させることができる可能性あると言われています。「人工光合成」は、実のところ効率の悪さが大きな問題となっています。様々な企業が効率の悪さの改善を目指しています。最近の研究では、7.2%という数値を記録して植物の光光合成効率を上回っていますが、今回の「日産自動車」の発表によって効率の向上を狙うことができるのです。「人工光合成」は、無限ともいえる太陽光エネルギーの活用として地球のエネルギー問題を解決できるかもしれない研究として注目を集めています。
「今後の人工光合成」
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「UC固体材料」では、2個の低エネルギーな入射光子から最大で1個の高エネルギー光子を生成することからUC量子効率最50%とされています。今回の成果では最大16%という高い量子効率を達成しています。この数値は、理論値の役5分の1となっており、今後の研究で効率アップするということが言えるでしょう。また「高効率なUCには、もはや入射太陽光の醜行が不要」ということも明確になってきました。「日産自動車」は2050年までに販売車種のライフサイクル全体のカーボンニュートラルの実現を目指しているのです。また、製品である自動車が二酸化炭素を排出しないことも重要ですが、その製造過程でもできるだけ二酸化炭素を排出しないことが求められているのです。これは、「公害」と同じような考え方と言えるのかもしれません。日本の高度経済成長期の時代、環境問題を犠牲にして工業は発展を遂げましたが、結局のところ環境問題によって苦しめられることになりました。このことを現在の世界の地球温暖化問題と似ている部分があるとも言われています。今後、「日産自動車」は自動車製造中の二酸化炭素の削減に取り組めることになります。「UC固体材料」については、その効果も含めて応用性に優れる素材であり、今後の研究開発に期待が集まります。
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